はるはなひいな 3

 

「・・・・起きて・・・」
 つん。
 つん。
 いたづらな指先に鼻の頭をつつかれて、獄寺は目を覚ました。

 ああ、失敗した。
 アイライン濃いめのオレの顔って、姉貴そっくりになんのか。

 つん。
 つん。
 髑髏が獄寺の顔をのぞきこんでいた。

「・・・・・・・・起きた・・・」

 また人数が増えているじゃねえか。
 そういえば、ハルの奴、女の子だけで雛祭、とか言っていた。
 ハルと獄寺(+イーピン、ランボ)だけで、とは言っていなかった。

「やられた。」

「・・・・鳩ちゃん・・・」
 子供のようにぽおっと上気した、髑髏の頬が近づく。
 というか、髑髏の顔全体が、獄寺の顔の上に落ちてきた。

「・・・・かわいい・・・」
「な、なんだっ!」
 キスですかっ!

「・・・・はじめましての頬ずり・・・・」

 すりすり。
 はじめ産毛だけがぶつかりあって、それから少女の肌に触れる。
 ランボやイーピンと遊んでいる時に触れる、子どもの頬のぷくぷくした感触とは違う。

「・・・・・ぽわんぽわん・・・」
 そうだ、ぽわぽわ。

 すりすり。
 すりすり。
 すりすり。
 すりすり。
 すりすり。
 すりすり。
 すりすり。

 ええっ!いつまで続けるんですか?!

「ふふ。髑髏ちゃん。いつまでも頬ずりしてると、頬っぺたくっついちゃうよ。」
 あ、笹川妹だ。

「お料理もー、飾りつけもー、準備できましたー。」
 バカ女。

「じゃあ、そろそろ和服の着つけしようか。」
 花。

「・・・・・・和服・・・・着る」
 髑髏。

 あれ?

「鳩ちゃんごめんね。ビアンキさんもさっきまでいたんだけど、たった今イタリアに向っちゃったの。」
 京子がすまなそうに言う。

「パパンに手料理ごちそうしたくなったって。家族思いですねー。」
 と、能天気にハルが言う。

 それは違う、と獄寺は思った。
 新しい腹違いの妹の出現に怒って、親父をしめに帰ったんだ。
 勝手に他人の家庭をかきまわすな、バカ女。
 と、言いたいところだが、バレたくない、バラされたくないから言えない。
 まあいいや。もともとぐちゃぐちゃの家庭だ。親父だって、たたけばほこりが出るだろう。
 何より、ビアンキがいないのは助かる。

 あ、そうだった。獄寺は花に頼んだ。
「黒川、アイラインちょっと薄くして。」
「いいよー。」
 忘れないで良かった。うっかり鏡を見るたびに、失神したくはない。

 あれ、オレまだなんか忘れてないか?


「もう、お二階にお着物広げてあるの。行きましょ。」
 京子ちゃんがイーピンをだっこする。

「ランボ、じゃあオレと遊んで待ってよう。」
 獄寺がうっかり普段の調子で喋っても、京子も花も、鳩=獄寺ということ気づかない。
 女の子≠獄寺、という先入観は堅い。

「・・・・だめ・・・・着替える・・・・嵐の守護者・・・・」
 げっ、一人気づいてるじゃねえかよ!

「・・・・・・・かわいい・・・・・鳩ちゃん・・・・・・・・・・・・・・・・・スキ」
 なんとなく大丈夫そうな気がして、獄寺はその件についての思考を停止する。
 それより、なに最後にぽつんと言ってんだ。どきどきするじゃないか。

 かなり力強く髑髏に手を引かれ、獄寺も2階に上がる。ツナの部屋だ。


「はひい。イーピンちゃん、似合います。」

 肩。腹。腕。生足。レースのキャミソール。水玉パンツ。フリルのブラジャー。

「どわっ!」
 獄寺はじりじり後じさりするも、髑髏に手をつながれたままなので逃げられない。

「かわいー。鳩ちゃん、恥ずかしがりやさんなの。」
「いいじゃん、女同士なんだからさ。」
 獄寺は下着姿の花と京子につかまって、シャツのボタンをはずされる。
 獄寺だと知っているハルまで一緒になって、デニムに通したベルトを抜き取っている。

 胸が近いんだよ!獄寺はぎゅうと目をつぶる。

 ブルッブルッ。

 やわらかな手に、寄ってたかって服を脱がされる。

 トンッ。トッ。

 発育した胸を見させられるのも恥ずかしければ、まっ平らな胸を見られるのも恥ずかしい。
 獄寺は頭に血がのぼって、タコみたいに真っ赤になっている。
 その時、獄寺の聴覚はまったく機能していなかった。

 ガラッ。
 窓が外から開かれる。

「やあ、また群れ」

「きゃあああ!」
「ちかんですう!!!」
「このやろー!」
「・・・・・・・・・・・・・・見てはだめ」
「*‘(&$%.?>L`!!」 

 少女たちに手当たり次第に物を投げつけられ、雲雀が窓から落ちていくのが見えた。
 イーピンまで餃子饅を投げている。


「・・・・・・・・・・・・・・すっげえ。」

 ブルッブルッ。
 バイクのエンジン音が去っていく。

 凄い、雲雀を撃退しちゃったよ、この人たち。
 最強かよ!! 


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、来るなって電話するの忘れた。」



 




2009/03/03



雛祭企画完了。

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