恋愛アレルギー3

 

 昼休み。
 獄寺が、昼食をとるツナと山本と共に屋上でダベッていると、今日も雲雀がやってきた。
 入口のところで手だけ伸ばして、ぽんと紙袋を床に置く。
「リンゴ。」
 それだけ言ってドアを閉めて行ってしまった。
「ああっ、今度こそ何したのか聞きたかったのに。」
 獄寺が紙袋を取りに行く。

「・・・何か変じゃないかな、今のヒバリさん?」
 ツナ。
「風紀委員長が獄寺専属で給食係な時点でおかしいのなー。」
 山本。

 2人のもとに戻ってきた獄寺が袋を開ける。
「今日のメニューはと。ポタージュと・・・リンゴ?」
 密閉容器を開けば、リンゴの香りはするけれど。
「今日はウサギリンゴじゃねえ。」
 コロコロのサイコロ状に刻まれている。
「そうか。草壁副委員長が戻ってないから、誰か別の奴が剥いたんだ。」
 ぽん。
 獄寺がサイコロリンゴを口に放り込む。
 シャリ。
 かえって食べやすかったりして。

「・・・給食係、案外不器用なのなー。」
「ええっ!それが恥ずかしくて逃げたのー!?」

 シャリ。


 午後の授業が終わるまで、雲雀は獄寺のクラスに来なかった。
 午前中に何をやらかしたのか聞きたくて、ツナの補習が終わるのを待つ間、応接室を覗いてみたが
雲雀は不在だった。
 他の委員も見かけない。忙しかったりするんだろう。

「じゃあまたね。獄寺君。」
「はい。10代目、また明日。」
 沢田家の前でツナと別れ、獄寺は自宅であるマンションへ向かったところ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おれんちが無い。」

 マンション自体は存在しているのだが。
 獄寺の部屋、4階の404号室が潰れてなくなっていた。

「えええ!!!」
 
 正確には、隣の高層マンション建築現場から落ちてきたとおぼしき鉄骨が突き刺さっている。

「獄寺さん?」
 管理人に呼び止められる。
「危ないから中へは入れないよ。今日はひとまず親元へ帰りなさい。」
 そこから声のトーンを落とす。
「・・・今朝の強風で、隣の建築現場のクレーンが倒れ、ぶつかった鉄骨が折れたそうだ。」
 獄寺が眉を寄せる。
「・・・・・・・・今朝、強風なんて吹いてましたか?」
 管理人の声がいっそう小さくなる。
「・・・・・・・・極地的な強風が吹いた、という事実があったことになっている。」
 管理人の目は、獄寺にそれ以上追及してくれるなと言っていた。

 クレーンがぶつかって折れる鉄骨というのもおかしい、設計上の誤りか、良くない材料を使っていた
のかもしれない、これから調査もあるだろう。下手すれば建築事態が白紙に戻るかもしれない。今回、
人的被害が無かったのは、不幸中の幸いだ。いや並盛の神風が吹いたのだ。そんな管理人の言葉
も、獄寺の耳には入らない。


 ぽっぽっ。

「・・・・今日はここで寝るしかねえのか。」
 獄寺は並盛公園のベンチで鳩の群れを相手にぼやいていた。
 通帳もパスポートも、着替えさえも持ち出せない。ホームレス中学生かよ。

 ぽっぽ。

 のんきに首を振って歩く鳩にも、帰る家はあるだろうに。

 ばばさっ。
 一羽の鳩が飛ぶ。

「・・・獄寺隼人、こんなところで何をしているの?」
 雲雀がいた。

「沢田綱吉の家で張っていたのに来ないから、捜してたよ。さあ、行くよ。」

 雲雀が獄寺の腕に手をかける。

「風紀上、公園に寝泊まりすることは認めない。」

 ぽっぽ。

「あ。はい。どっか移動します。」

 獄寺は落胆する。公園でさえも眠れないとは。明日学校が始まるまで、終日営業のファーストフード
店にコーヒー一杯で居続けるしかないのか。
 ベンチから立つと、ちょっと脳貧血でくらりとする。

 ぽっぽ。

「どっかじゃない。僕の家だよ。」
 雲雀が告知する。

「朝から晩まで、風紀指導をさせてもらうよ!!」

 ばばさっ。
 ばささっ。

 雲雀が声高らかに宣言すると、公園じゅうの鳩が飛び去って行った。彼らの家へと。


「・・・・・。」


 救いの神?




2009/03/07

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