シャボン玉

 

 

 獄寺は、ランボとイーピンがシャボン玉で遊んでいるのを見かけた。

 大きい玉。小さい玉
  。。。。。○
。。。。。○○。。。。。 
 。。。。。。。。。。。○。○

 見つめていると、ついつい手が出てつついて潰してしまう。
 ふわふわ。ぷちぷち。
 ふわふわ。ぷちぷち。
 ふわふわ。ぷちぷち。

「ランボさん怒ったもんね!!」
「+<_$*!!」

 ランボとイーピンは怒って、謎の言語で奇怪な呪文を唱えながら、大きなシャボン玉の中に獄寺を閉
じ込めてしまった。

 ふわわわわん。
 獄寺入りのシャボン玉は浮力をもって漂っていく。

「出せー!!」

 もちろん獄寺は内側からシャボンの壁を叩いたが、石鹸水の膜に触れると、つるんと滑ってしまうの
だった。

「獄寺なんかあっち行っちまえ!!」
「%&’%$$#!!」

 獄寺は風に吹かれて流された。

「10代目の方へ行きたいな。」

 風は親切にも、ツナのいるところまで運んでくれた。

「あ。獄寺君!そんなところでどうしたの?」 
「どうしたもこうしたも。」

 事情を説明すると、ツナはうんうん頷きながら、シャボン玉に指をつきたてた。するとシャボン玉は風
船のようにへこんだが、割れはしない。試しに、シャーペンや包丁をつきたてても同じ結果だった。

「しかたないね。」
「しかたがないですね。」

 獄寺はシャボン玉の中ではあるが、普段通りに過ごした。用が有っても無くても、10代目の右腕とし
て常にツナの側に控えることはできたのである。
 不思議なことに、シャボン玉の中にいると食事やトイレの必要はなかった。ヘビースモーカーなの
に、喫煙の欲求までなくなってしまった。

 シャボン獄寺は、ツナのボディーガードもできた。シャボンがツナの前に立つと、銃弾もナイフも、ふる
んと弾かれてしまうのだ。

「あとはボムを出せさえすれば、完璧です。」
「シャボン玉から出ること考えるのやめたの?獄寺君?」
「この方が、10代目のお役にたてるのなら、このまんまでいいです。」
「・・・・・そう。」

 獄寺が屈託なく笑うので、ツナはそれ以上追及しなかった。



「なにこれ?」

 獄寺入りのシャボン玉を見た瞬間、雲雀の額に激怒マークが浮かんだ。

「なにふざけてるの、獄寺隼人?」

 雲雀はトンファーでシャボン玉を打撃したが、やはりつるんつるん滑ってしまって割れはしない。

「ああああっはっは。」

 シャボンの内側で高笑いする獄寺を見て、雲雀は本気で咬み殺してやりたいと思った。

「あっはっ。」

 獄寺は笑い疲れて、シャボンに額を寄りかからせた。
 雲雀はシャボン越しに、その額に唇で触れた。
 キスは石鹸の味しかしなかった。
 雲雀は手で口を拭った。

 また、雲雀はシャボン玉ごと獄寺を抱きしめようと試みたが、つーるんと滑って転んでしまった。

「っあはは。」

 シャボンの中で腹を抱えて笑う獄寺には、辛いことは何も無く、満ち足りて楽しそうではあったけれ
ど、雲雀には獄寺がこれ以上もなく悲しい存在に思えてしかたがないのだった。

「臆病者。」

 

2009/04/28

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