潜入なみもり民宿

 

「いたっ。あそこだっ。」
 ぱをん。ぱおん。
 風船三輪車を漕ぐSHITT・Pの後を、元気いっぱい獄寺が追う。やがて三輪車
は町中の一軒家の上空で停まって、ぷるるんと震えながらしぼんでいく。完全に
着地するとSHITT・Pは風船を身にまとい、『なみもり民宿』の看板がかかる建
物へと入って行った。

「とうとう見つけたぜ。ここが地底世界への入り口か?」
 玄関は施錠されていない。忍び足で入るとスリッパが並んでいる。ここで靴を
脱がねばならないらしい。
 踏むときゅーと鳴る廊下を、獄寺は期待に胸膨らませながら息を殺して歩く。
 ひとつひとつ扉を開けて中をのぞくものの、宿泊客どころか従業員の姿もない。
黒電話にトランジスタラジオにちゃぶ台と、昭和の香りが漂うオブジェの数々に、
獄寺の直感が閃く。
「地底人は昭和の時代に、既に地上に来ていたのか!」

 廊下に置かれたマッサージチェアに、何か仕掛けがあるのではとしゃがんで見
ていたその時、聞き覚えのありすぎる声が響いた。 
「なにしてんの、君?」
 ぎょっとして振り向くと、浴衣姿の雲雀が肩にヒバードをのせて立っていた。
「ひ、ひばり?お前がどうしてここにっ!」
「ここにって、僕の常宿だけど。どいて。」
 雲雀がマッサージチェアに掛けると、ヒバードが頭へ飛び移る。
「知る人ぞ知る穴場だったんだけど、君に見つかっちゃおしまいだな。」
 ぶるるるる。ぶるるるる。
「穴場だと?さてはお前も地底人か!」
 ぶるるるるる。ぶるるるるる。
「・・・・何の話?」
 ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる。
「そうか!雲雀もSHITT・Pも、シモンの奴等も、みんな地底人だったのか!
さっそく十代目にご報告だ!!」
 獄寺は嬉々として走っていった。
 ぶるぶるぶる。ぶるぶるぶる。
「チテージン。チテージン。」
 ヒバードがさえずる。
「・・・・・・だから何の話?」
 ぶるるるるる。ぶるるるるる。


2010/04/27


 地底人に夢中の獄が可愛すぎるよ。
 そして昭和の香りのなみもり民宿は、委員長も似合うと思うんだ。
 学ランと昭和遺跡の組み合わせは鉄板でないかい。
 雲雀とアーデルハイトは廊下ですれ違ったりしても、浴衣姿でほっこりしてて、
 お互いに気づかないんだ。

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