まめ

 

エレベーターの中で二人きりになって
いち にい さん 
言葉も無い気まずさを誤魔化すために
しい ごお ろく
ドアの上の階数表示板を見上げることが
なな はち きゅう
さも重大な使命のような顔をして
じゅう じゅういち じゅうに
口の中で呟く呪文
じゅうさん じゅうよん じゅうご
あたたかくて細いものが指に触れて
じゅうろく じゅうしち じゅうはち
それが彼の手だと気づく前に指をからめあい
じゅうきゅう にじゅう にじゅういち
掌をすりあせて手をつなぎあわせたら
にじゅうに にじゅうさん にじゅうよん
まめがいっぱいあるのに気づく
にじゅうごさん にじゅうろく にじゅうしち

ぽーん

「またね」

ひらっと揺れるあの手のまめの一つに
爪をたてて傷つけてやったとしたら
あんなに冷たい顔で離れていけるのだろうか

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