休憩時間





 キーンコーンカーンコーーン。

 全館にチャイムが鳴り響いた。
 しばしも経たないうちに並んだドアが開いて、次々と出てきた者達で廊下はあふれ
かえる。
 伸びをする者、あくびをする者。飲料を買いに行く者、いそいそと他の部屋まで差
し入れを運ぶ者。タバコを吸いつつ、窓から外を見下ろす者。

「バッカでー。また三角ベースやってら、野球部の奴ら。」
 15分しかない休み時間に熱心なことだ。

「バカは君じゃない。非番の日に職場に出て来るなんて。」

 ここはイタリアのボンゴレ本部。しかも、+10年後。


       ☆     ☆     ☆     ☆     ☆


 ボンゴレの十代目は若くしてボスを継承したため、守護者をはじめとするファミリーの
者らはみな若く幼く、義務教育年齢に達していない者までいた。
 マフィアの子弟むけの学校に通わせられるような時間の余裕はなかった。そこで、
様々な分野から多くの家庭教師を招聘し、定期的に講義を行うという措置が執られた
ため、一時期ボンゴレ本部は教育機関を兼ねていた。

 しかし、マフィアとしての教育に仕事に加えて、元来苦手とした勉強の課題までが
山々と積み上げられて、ツナはある日突然グレた。

「オレはマフィアである前に、普通の中学生だっ!」 

 ツナはそう宣言して、ボンゴレ内で並中の制服を着用しだしたのだ。

 当初獄寺はツナに、子供っぽいです、スーツの方がボスらしいですと、制服の着用
を止めるよう懇願したが、ツナのグレ加減が固いと知るや、獄寺も制服を着用しはじめ
た。一人よりは二人の方が目立たないと考えてのことだ。
 すぐに山本と了平が面白がってそれにならい、雲雀もしれっとして学ランを着てきて、
クロームもボスに従うと言ったか言わなかったか知らないが、黒曜の改造制服を着だした。
 そうなれば、守護者以外の若いファミリーの面々も、各々好きな制服を着て本部内を
闊歩するようになる。

 次にツナがグレた時から、定時にチャイムが鳴らされることになった。延々と続く重要な
会議も、チャイムが鳴ったら強制的に休憩。かえって作業効率が上がって、これは改革
だとあっさり受け入れられた。

 以後、楽しみに飢えたツナは、マフィア流の行事に加えて、球技大会、文化祭、体
育祭、合唱コンクールといった学校行事をボンゴレに持ち込んだ。
 部活動は山本と了平が、委員会活動は雲雀が導入した。
 中学生がマフィアになったというより、マフィア組織が中学校に塗り替えられたという有
 様だった。

 十代目や守護者の多くが成人した後も、その頃の習慣はボンゴレに残されている。
 さすがに、24歳になった今日、ツナも獄寺も制服は着けていない。今思えば懐かしくも
アホらしくもあるが、外側からどんな肩書きをつけられたとしても、自分は自分なのだという
意思表示、大人達に対する抵抗だった。


       ☆     ☆     ☆     ☆     ☆


「休みにココに来んのが、一番リラックスするんだ。」

 雲雀は正式にはボンゴレに属さないため、表向きボンゴレ本部に部屋はない。しかし、
雲雀が訪れる際に陣取る部屋は決まっていて、実際は雲雀専用になっている。

「君は昔から、応接室でサボるの好きだよね。」





 おしまい。






2010/11/05


 自己満足的ポイント:財団長になっても応接室を占拠する人
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