きいろ



  並中の制服は並中生にはあまり人気がない。明るい黄色のブレザーは町をふ
らつくと大人達の注意を引くし、他校生と喧嘩になれば小便色と囃される。だか
ら誰しも一度は、風紀の学ランを着てみたいと考える。

 獄寺自身は、黄色は日本人のオークル系の肌を明るく見せるけれど、黄みも
赤みもない自分の肌には似合わないと感じていて、日々着こなしに気をつかって
いる。


「オレとお前が同じの着てたら、どっちがイケてると思う?」
 ノックも無しに応接室へ入り込み、許しも得ずにソファに掛けた獄寺に、雲雀
はデスクから鋭い視線を送った。バサッと書類を置く。

「・・・・くだらない話をしに来たね。」

 実は、獄寺も学ランを着てみたいのだった。まずは黒を着たい。次に長ラン
は大量のダイナマイトを隠し持つのに適している。しかし、アナクロな詰襟が似
合うかわからない。
 試着してみたいと風紀副委員長の草壁に頼んで羽織らせてもらったが、両袖
を通すと詰襟で顔が半分隠れてしまった。他の風紀委員もガタイがいい奴ばかり。
中では雲雀が一番小さい。

 雲雀に学ランを着てみたいから貸して欲しいと本心を明かしたら、雲雀は獄寺
に風紀委員会に入れと言いだしそうだ。そこで、雲雀の口から獄寺に学ランを着
ろと言い出させようという算段。群れるのが嫌いな雲雀が、皆と同じ制服を着る
わけがないと思っている。

「オレに勝つ自信ねえのかよ?」

 そして、負けず嫌いの雲雀は売られたケンカを無視できまい。

「負ける気はしないよ。生物としてのつくりが君とは違うからね。確認するけ
ど、2人同じものを着ていればいいんだね?」
「ああ。」

 いよいよ雲雀の口から、獄寺に学ランに着替えろという言葉が出るか。獄寺は
わくわくしながら雲雀の次の言葉を待つ。

「それなら、これに着替えてもらおうか。」

「ぴー。なんでこんなことに。」
  雲雀が獄寺に着るように命じたのは、風紀の腕章をつけたヒバードの着ぐるみ
だった。

「ぴぴ。初夏の風紀取り締まり強化キャンペーンのために2着作ったんだけど、
僕以外に着れる者がいなくってね。お蔵入りにならなくて良かったよ。」
「ぴー!1羽で出動すればいいだろ!」
「ぴぴ。2羽だからこそ威力を発揮するんだ。どっちに僕が入っているかわから
ないからね。」
「ぴー!オレ黄色苦手なのに!」
「ぴぴ。色は関係ないぴ。」
「ぴー!蒸しあちー!」
「ぴぴ。脱いだら君の負けだぴ。」
「ぴー!負けるもんか!」
「ぴぴ。キャンペーン期間中ずっと着ていられたら、冬の風紀取り締まり強化キ
ャンペーンに、防寒用の学ランを作ってあげるぴ。」
「ぴー!ホントかー!」


 そして冬。
 既に2羽のヒバードの着ぐるみは、風紀委員会のマスコットキャラクターとし
て、並中のみならず町中で親しまれている。

「ぴー!!こういうことか!!」
「ぴぴ♪」

 以降、学ランを着たヒバードは、並盛町の冬の風物詩となるのであった。


 


なぜか、最後の部分が消えてしまっていました。
その間に拍手してくださった方はごめんなさい。
保存していなかったので、最初にUPしたのと違っちゃってます。
ぴぴ。増量しました。
ブラウザ直打ちは危険ですね。

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