匣兵器:用途以外のご使用はおやめください
十年後の世界で得たモノもあるけれど、置いてきちまったモノもある。
たとえば匣。
ありとあらゆる技術を詰め込んで、16個全部カスタムしたのに、持ってこれな
かった。
「ばかだね。外側なんてどうでもいいじゃない。」
確かに中身のアニマル達は連れてこれたけれど、カッコよく装飾した匣にも未練
がある。
雲雀は机に置いたハリネズミをでんぐり返しさせて、ツンツン指先でつついて転が
して遊んでいる。
「キューィ。」
可愛い。確かにロールは可愛い。第一持ち主に懐いてるし。
「にょーん。」
雲雀のまねして、瓜が横からロールにちょっかいを出しはじめた。
爪を引っ込めてるし、ロールが怖がってないから放っておく。
玩具を取られた雲雀がこっちをむいた。両手を猫の手みたいに指を丸めてる。
「にゃーん。」
お前が瓜のまねしたって可愛くない!っていうか気色悪いっつーの!
オレはそこら辺にあった紙くずを雲雀に向かって投げつけてやる。
「痛くないにゃーん。」
あーあ。
今ここに匣があったら、投げつけまくってやれるのにさ。
おしまい。
2010/11/05