地下アジトの自動販売機の謎 2

 

 地下アジトにやってきたディーノは、食事の度に子どもたちが紙パックの牛乳を
大量に消費することに驚いた。一人につき一食あたり2本か3本だが、女の子も男
の子も毎食それだ。非戦闘員のフゥ太らが地上で買い込んできても、あっという
間になくなるのは道理だ。自分が14、5の頃を思い返せば、やっぱり身長を伸ば
したくて、牛乳を飲みまくっていた記憶もある。

 さて、修行の個人別カリキュラムを伝えた日に、女の子たちが家事をボイコット
した。まったくもって、自分は間が悪いなあとディーノは思う。栄養バランスの
整ったちゃんとした食事に飢えた子どもたちのことを思うと、紙パックの牛乳に
伸ばしかけた手を引っ込めざるを得ない。マフィアのボスらしくもない慎ましさ
だ。

 しかし、笑顔麗しきディーノとて、ストレスは溜まる。ツナはボックスの開け方
について勘違いしているし、何より女の子の扱いが最悪だ。女の子と同時に複数
つきあうなら、一人ひとりに君だけに頼むよ、君だから教えるんだよと言ってや
らなければ。
 雲雀は雲雀で、ディーノが目を離せば、すぐに姿を消す。フゥ太とバジルがデー
タを抹消した防犯映像に映っていたのは、聞くところに寄れば、ちょっと待て、
おい、そんなばかな、修業中にそんな好い目を見るなんて、いったい、何のつも
りだ!と叫ばずにはいられなくなる状況。

 そして、もう一つ。ディーノのボックス兵器である愛馬が、初登場時、密かに失
笑を買ったらしいこと。


 ああ、カルシウムが欲しい。
 トレーニングルームを出たディーノは、自動販売機の商品見本の中に牛乳を見つ
けた。アジトに来て以来、子どもたちが自動販売機を利用しているのを見たこと
はない。食堂へいけばただでいくらでも飲み食いできるのだから当然だろう。
「牛乳、飲んどこ。」
 ディーノは自動販売機に硬貨を入れてボタンを押した。なんか今一瞬、力み過ぎ
て、大空属性の炎を注入してしまった気がする。どれだけ牛乳飲みたいんだ、自
分。
ドン。
 落ちてきた缶入り牛乳を拾い、その場でプルタブを開けて飲んでいると、『故
障・使用禁止』の札が目に入る。「故障してない。使える。」剥がす。
 その時、雲雀の声がした。
「大空の炎はどのボックスでも開けられるって言ってたね。」
「にゃおん。」
 白猫になったディーノが、雲雀の足になすりつく。
 雲雀は缶の品質表示を読んだ。

「白猫印の美味しい牛乳」
注意 飲んだら白猫になります。
体質にもよりますが、ほぼ1時間で効果は消えます。
いっぱい可愛がってあげるから、飲む前にオレの部屋においで、ハヤト。 
BY ボス
 企画製造 ボンゴレ・ドリンク・コーポレーション 」

「にゃおにゃお。」

「ウザ。」



 

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