【VDお題】ビターな恋人
Aランクの指輪と匣兵器、各5つをボンゴレに提供する代わりとして、雲雀財団は10代目のドン・ボンゴレ
の嵐の守護者からチョコレートの寄贈を受ける権利を得た。
それは、沢田家で開催された新年会の折、ほろ酔い加減の獄寺隼人の次の発言の言質を取ることにより
実現した。
「指輪と匣が足りねえ。くれる奴には何でもやるぞー。」
いぶりがっこを肴にシャンパングラスを傾けるいい加減さは、日頃イタリアで見せている冷徹で怜悧な右腕
の顔からほど遠い。
「た・だ・し、オレのポケットマネーの範囲内で!」
獄寺の財布は常に収入と支出が同じという噂。今日もランボ・イーピン・フゥ太にお年玉をやったら空っぽ
だ。高額の報酬を何に注ぎ込んでいるかは誰も知らない。
「それって、具体的にいくらまでなの?」
樽酒を一人占めしていた雲雀が、杯がわりにしていた柄杓を置いた。
「さんぜんえーん。」
獄寺はケタケタ笑ってから指をくいくいっと曲げる。
「3千円までだったら、モノは指定してもいい?」
雲雀は柄杓に樽酒を掬い、獄寺の口元に差し出した。
「ん。」
ぺろりと舌先で味見する。
「3千円以内ならな。」
獄寺が薄く唇を開くのにあわせ雲雀は柄杓を傾ける。潔癖な獄寺は実は他人と食器を共有できない。
「日時も指定したい。」
「んん。いいぜ。リングとハコ計10個、きっちり貢いでくれるんなら。」
けれどそれは、唇をあわせたことがある相手は自ずと除外される。
「オマエが好きそうな辛口。」
「君の好みでしょ。」
2月14日の午後、獄寺はカカオ99%の板チョコ15枚をポリ袋につっこみ、財団へ足を運んだ。
「一度に食うな。豚んなるぞ。」
つきあい始めて10年、初めて雲雀に贈るバレンタインのチョコレートになる。チョコとしか指定を受けていな
かったから、一番甘くないものを選んだ。
「一生大事にする。」
雲雀は袋の中をのぞいて苦笑した。
「あほか。食えよ。」
早々と踵を返す獄寺の背に雲雀が呼びかける。
「君のことだよ。」
2010/02/13
苦いのめざしたけど甘くなった。。